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2023.12.07

コラム

スポーツや学校での顔面外傷

子供 歯が折れる

こんにちは。山梨県南都留郡富士河口湖町の歯医者、井ビシ歯科医院(いびし)です。

歯は失ったら取り戻せない大切なものですが、事故やスポーツ中での外傷において、怪我は避けられないものです。
もし怪我をしてしまったら、早急な対応が必要です。今回は特に学校での部活動などでの顎顔面外傷についてお話しします。

目次

1.子どもの顎顔面外傷

2.予防のためのマウスガード・マウスピース

3.歯が折れたり、取れてしまった場合

子どもの顎顔面外傷

年次的推移から見た小児外傷の特徴

子供 怪我

小児期は心身ともに成長発育段階にあり、身体的・精神的・社会的にも未成熟のため予期せぬ状況下では成人と比較して、口腔・顔面の外傷を受ける機会が多いといわれております。さらに、増齢によって発達する運動能力や危険認識力が不十分であることから突発的な事故を起こしやすいです。

特徴として
①乳幼児は胴体に比し頭部が大きいため転倒しやすい。
②身長が低いため視野が狭くなり、興味を示すものに関心が集中し、全体の把握あるいは危険を予知する判断能力に支しい。
③体重を支えるだけの腕力がないこと。
④自分で経過、症状を訴えることはむずかしい。

学校での歯・口の外傷発生状況

部活動、体育の活動中の事故で、「歯の障害」は、小・中学校・高等学校等において約30%を占め、「眼の外傷」に次いで多い状況ですが、高校2・3年生では最も高い発生状況です。
さらに、発生部位は上の前歯が多く、「前歯で噛み切る」、「正しい発音をする」、「顔の表情」などに影響を与えます。

また競技別でデータを見ていくと、ラグビー、野球、サッカー、バスケットボール等の球技で多く発生しています。

予防のためのマウスガード・マウスピース

マウスガード

マウスガード・マウスピースは、競技中の外傷を未然に防ぐために口腔内に装着する器具のことです。

スポーツによる歯や口の外傷予防には、カスタムメイドのマウスガードが有効です。
中高生の競技によっては、スポーツマウスガード・マウスピースの装着が義務付けられていることもあります。

スポーツ時などに顔や頭に衝撃があると、歯との間にはさまれた粘膜を切ったり、歯が折れたりしやすいのです。「マウスガード」は、スポーツ時の衝撃から歯や口の粘膜を守ってくれます。

ラグビー・ボクシング・空手などの激しく接触するようなスポーツだけでなく、一般的なスポーツのときにも、課外活動や体育の授業などでも使うのが望ましいとされています。
歯は、失ったら取り戻せない大切なものです。
※マウスガード装着についての詳細は、各競技団体にお問い合わせください。

▶︎井ビシ歯科医院の「スポーツマウスガード」についてはこちら

歯が折れたり、取れてしまった場合

子供 泣いている

子供が転んで、歯が折れてしまったり、取れて(脱落)してしまう場合もあります。

子供が顔面に怪我をしたら、歯にダメージを受けていないか、注意して見てみてください。もし折れていた場合、折れた部分を持ってすぐに歯科医院に行きましょう。

折れていても歯科用の接着にて修復できる場合などいろいろ治療法があります。また歯が抜けてしまっても時間が経っていなければそのままはめ込んでつく可能性もあるので、保存液や牛乳につけて歯医者さんに持っていきましょう。

汚れがあっても歯ブラシなどでゴシゴシをせずにすぐに歯科医院に持ってきてください。1ヵ月後以降に、歯が茶褐色に変色してくることがあります。
歯髄が切れて死んでしまった証拠ですので、歯医者さんでの継続した処置が必要です。

受傷後の歯の保存について

脱落した歯を再植することは、後継永久菌の発育やスムーズな交換に悪影響を及ぼすことへの懸念もありましたが、近年の研究では審美的、機能的な面はもちろん、患児や護者の心理的な面においても、条件が整えば再植を試みる価値は十分にあるものと考えられております。

脱落歯の歯根膜組織を良好に保つことが、その予後を決定する非常に重要な要素となります。歯の外傷は、同時に頭部へのダメージが懸念されることが多く、そちらのチェックや治療が優先されて歯科処置を行えるのは、その後になるケースも少なくないので、脱落から歯科医院や歯科口腔外科での専門的な処置まで保存液に入れておくのが理想です。

脱落保存液としては以下のようなものが挙げられます。

1.歯の保存液

学校の保健室などにあります。

塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウムなどの無機塩類と浸透圧調整剤、糖類から構成され、24時間以上の歯根膜組織保存能を有しております。

また、溶液自体の保存期間も長く(2年間)、比較的手頃な価格で購入できるなど多くの特長を備えており、広く学校などに常備することも推奨されております。

2.牛乳

牛乳は生理的範囲内のphを有し、歯根膜細胞の保存効果が生理食塩水や唾液よりも高いとされています。

製品の品質に統一性がないことや脂肪分の問題、また異種タンパク質の反応を起こす可能性があり、再植歯の生着率の予知性に疑問が生じることも考えらますが、一般家庭で容易に入手できる点が歯の保存液としての大きなメリットと言えます。

3.生理食塩水(等張食塩液)

脱落した歯の保存液として長く使用されてきた、塩化ナトリウム0.9%を含む電解質溶液のことです。

しかし、生理食塩水を歯の保存液として長時間使用した場合、置換性吸収(アンキローシス)が生じること、またヒト抜去歯を30分間生理食塩水に浸漬すると、歯根膜細胞が破壊され、細胞活性が失われることが報告されるなど、長時間にわたる歯の保存液としては十分ではないことが明らかとなりつつあります。

4.唾液

脱落歯を口中に含むことで利用できるため利便性は高く、もしもの緊急時にはは最終手段として、口の中へ入れておくこともできます。
しかし浸透圧が歯根膜蔵と比較して低張で長時間の保存には適さないため、手近に適切な保存液がない合の応急的利用に限られます。

さらに子どもの場合だと、誤って飲み込んでしまったり、話すことができない苦痛から長時間口の中に入れておくことも困難なため、限られた場合のみ有効かと思います。

当院では口腔外科に特化しており、このような緊急の外傷にも基本的にいつでも優先して対応しております。
顔面外傷で受傷後お困りのことがあれば、すぐに電話連絡していただければと思います。

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この記事を書いた人

井ビシ歯科医院

井出 太一

日本歯科大学生命歯学部を卒業、現在は井ビシ歯科医院に務める。

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