新着情報

2023.11.06

コラム

小児歯科 学校歯科検診について

歯科検診 子供

こんにちは。山梨県南都留郡富士河口湖町の歯医者、井ビシ歯科医院(いびし)です。

今回は小児歯科での学校歯科検診についてお話しします。
このコラムを見てくださっている方も、小学校中学校での歯科検診を受けたことがあるかと思いますが、その中で「しゃせん」「シーオー」などのやり取りを聞いたことがあるはずです。
学校で行われる歯科健康診断では、虫歯などの病気を見つけるだけではなく「健康志向型のスクリーニング」も行います。
児童生徒のむし歯や歯肉炎などの歯や口の健康課題をスクリーニングし、その結果を健康増進の取り組みに役立てることが将来のために重要です。

健康診断から得られた個々の児童生徒の歯・口の状態は貴重な情報となります。
その後「歯科医院へ受診してください」と書かれた、学校歯科健康診断結果の紙をもらうこともあるかと思います。

今回のコラムでは、その内容についてお話ししていきます。

目次

1.学校歯科検診での判定について

2.COとGOについて

3.顎関節の診査について

4.歯列・咬合の診査について

5.学校でのエチケット歯みがき

学校歯科検診での判定について

歯科検診

まずは、検診を行う歯科医師が発する言葉やアルファベットについて解説します。

・「しゃせん」 = 斜線 /
正常の健康的な歯であり、治療もしていない歯のこと。

・「まる」   = ◯
以前虫歯であったが、治療済みである歯のこと

・「しー」   = C
Caries 虫歯の略の頭文字

・「おー」   = O
Observation 観察の略の頭文字

・「しーおー」 = CO
虫歯になりかけている歯のこと

・「じーおー」 = GO
歯肉炎になりかけている状態

その他にも、顎の関節の状態、歯列・咬合の診査などについて、「1」「2」「3」の数字で判定していきます。

COとGOについて

学齢期に好発するむし歯と歯肉炎は、発症前後を早期で発見することが大切になります。

CO=要観察歯:実質欠損はないが、そのまま放置すればむし歯に進行する可能性が高く、事後の観察、指導が必要な状態です。
う蝕=虫歯の初期病変の徴候(白濁、白斑、褐色斑)を認めます。

GO:適切な指導や生活習慣の改善とブラッシングにより症状が改善する程度の歯肉炎を認める状態です。
口腔環境の改善により歯肉の炎症も改善する可能性が高くなることから、3〜6ヶ月後に臨時健康診断を実施し経過観察する必要があるとされています。

顎関節の診査について

顎関節症 子供

頭関節の症状は中学校の頃より多くなり、発現率は低いですが、痛みが出ると開口障害や閉口障害などの症状によって、食事が取りづらくなってしまいます。

時間の経過とともに治ることが多いのですが、痛みが続く場合は相談、指導などが必要です。歯科医院や歯科口腔外科での治療が必要なこともあります。
事前に保健調査票に記入してもらい、「口が開けにくい」、「口を開けるときに関節のところで音がする」、「痛みがある」といった欄にチェックが入っている児童生徒について、次の基準で判定します。

「0」
異常なし 指が3本をまとめて横にした状態で、入るかどうかは判定基準となります。
開閉口時に、痛みや違和感がなく、3横指以上の開口度あれば、まず問題ないでしょう。
「1」
定期的観察が必要
開口時に下顎偏位がある、時々、関節雑音がある、口が開けにくい。
「2」
専門家(歯科医師)による診断が必要
頭関節部、咀嚼筋部に疼痛が認められる、顎運動時に頭著な痛みを訴える、開口時に2横指以下しか開口できない。

事後措置として留意点

口が開けにくくなったり、顎関節部に痛みを自覚するようになったりした場合
には、学校歯科医やかかりつけ歯科に相談するように指導します。

歯列・咬合の診査について

健全な状態にあったとしても歯列不正・咬合異常があると、咀嚼や発音などの口腔機能は十分に営まれず、歯の外傷の原因になったり、心理状態に影響を及ぼすことがあります。

また虫歯や歯周病のリスクが増し、将来的には入れ歯になってしまう可能性も増えてしまいます。しかし、歯科健康診断で矯正治療の必要性を判断することはできません。将来、口腔の健康、全身の健康にとって、どのようなリスクが考えられるかを、学校検診の機会にご本人・ご家族にわかっていただくことが大切です。
健康相談、保健教育を通じて理解、留意させる必要があります。

咬合判定「2」の基準

下顎前突:前歯部2歯以上の逆被蓋の状態
上顎前突:オーバージェットが7-8mm以上
叢生:隣接歯が互いの歯冠幅径の1/4以上重なり合っているもの
正中離開:上顎中切歯の空隙が6mm以上
開咬:上下顎前歯切緑間の空際が6mm以上

*ただし、萌出が歯冠長の1/3以下のものは除外

これら以外の状態で、特に注意すべき咬合並びに特記事項(例えば、過蓋咬合、交叉咬合、鋏状咬合など)です。

歯列・咬合の判定は、児童生徒が歯の交換期間であるため、発達段階を考慮する必要があります。正確な診断には、専門もレントゲンでの精密検査が必須です。
矯正歯科を標榜する歯科医院や日本矯正歯科学会認定医・専門医の資格を持った歯科矯正科医に見てもらいましょう。

学校でのエチケット歯みがき

子供 歯磨き

基本的な感染症対策を踏まえたエチケット歯みがきを紹介します。給食後は、周りの友達を歯を磨く時間です。
基本的な感染症対策を踏まえたエチケット歯みがきを紹介します。唾や泡の飛び散りに気をつけて、しっかりと歯をみがきましょう。

  1. 口を閉じてみがく
  2. 前歯の裏側をみがくときは口を手で覆う
  3. 歯みがき中は私語を止める
  4. うがいは少ない水で1〜2回で十分です
  5. 吐き出すときは低い姿勢でゆっくりと
  6. 洗口場・手洗い場が混まないようにしよう
  7. 歯プラシは流水下で洗い、水を切って乾燥、保存

*令和4年4月現在、学校での歯みがきによるCOVID-19のクラスター発生は報告されていません。
地域の流行状況と感染対策を考慮した上で学校における歯みがきの実施が推奨されます。

著者写真

この記事を書いた人

井ビシ歯科医院

井出 太一

日本歯科大学生命歯学部を卒業、現在は井ビシ歯科医院に務める。

井出 太一先生について詳しくはこちら