2024.01.15
コラム歯周病と全身の健康との関係について Part3
こんにちは。山梨県南都留郡富士河口湖町の歯医者、井ビシ歯科医院(いびし)です。
“歯周病は万病のもと”とも言われておりますが、今回も前回に続いて、歯周病の影響が及ぼす疾患について説明していきます。
歯周病を引き起こすのは、「歯周病菌」と言われる数百種類もの細菌群です。この細菌たちは、口の中で留まるだけでなく、さまざまなキッカケによって、血管から入り込み全身へ循環したり、気管を通じて肺へ行き、肺の炎症の元になったりします。
そして全身の疾患にも大きく関連していることから、健康のためには歯周病対策は必須であることは周知の事実です。
今回のコラムでは、歯周病と関連する様々な疾病(虚血性心疾患、脳梗塞、肥満)について説明していきます。
目次
歯周病と虚血性心疾患について
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)とは、心臓に血液を送る血管である冠動脈が狭くなり血液の流れが少なくなる狭心症や、冠動脈が詰まり血流の流れが途絶える心筋梗塞があります。
アメリカで発表された疫学調査では、歯周病患者は健常人に比べて2.7倍の高い頻度で心臓発作を起こしていることが判明し、1999年には、心臓の冠動脈が粥状の塊(アテロームブラーク)により徐々に狭められるアテローム性動脈硬化症におけるアテロームブラークの45%以上に歯周病菌の1種のジンジバリス菌が検出されたことが報告されています。
これは歯周病菌が心臓冠動脈の内皮細胞に付着し、起こった炎症の刺激によって発生したサイトカイン(プロスタグランディン E2、インターロイキン1β、TNF-αなど)が血小板の凝集を誘導し、血栓形成に関与していることを示唆していると言える発表でありました。
その他にも有名な論文として
◎Beck らは、歯周炎の骨吸収と心冠動脈疾患、重症心冠動脈疾患、卒中(脳梗塞、脳出血など)のオッズ比がそれぞれ1.5、1.9、2.8であることを示している。
◎奥田らの研究では、5種類の歯周病菌のDNAが狭窄部位の血管内壁プラークから見つかっている(心臓の冠状動脈の狭窄部に歯周病菌が存在するかどうか、51人の者を対象に調べた結果)。また、歯周病菌の検出率は、歯周ポケットの深さと関連することも分かった。このことは、歯周ポケットが深くなるほど、血液中に侵入する歯周病菌が多くなっていることを示している。
以上のことから、歯周病が虚血性心疾患のリスクであることはわかっております。
歯周病と脳梗塞について
脳梗塞を起こす脳血栓のうち、アテローム血栓性梗塞(脳梗塞の約20%を占める)は虚血性心疾患と同様に歯周病原生細菌の関与が考えられると言われてます。
また、心臓内や頚動脈にできた血栓が血液の流れに乗って進み、脳の血管を閉塞させてしまう脳塞栓(のうそくせん)への関与も疑われてます(同30%)。
◎ドイツのGrauらは、アタッチメントロスが6mm以上の重度の歯周炎の患者では、アタッチメントロスが3mm以下の健常者と比べ脳梗塞を起こしている人が4.3倍であることを示している。
◎アメリカで25歳から74歳までの9,962名を対象とした観察研究から、歯周病のない人たちに比べて歯周病のある人たちでは、その後の脳梗塞の発生率が2.1倍に増えており、致死的な脳梗塞に至っては2.8倍に跳ね上がると報告されている。
以上のことから、歯周病がある人はそうでない人の2.8倍脳梗塞になりやすいと言われております。
歯周病と肥満について
国内の研究結果によると、肥満者(BMI25以上)の歯周病罹患者は、普通体重者(BMI 18.5~25未満)に比べ1.55倍であったとされてます。年齢や喫煙習慣を考慮すると、肥満者は普通体重者より歯周病に1.49倍で、統計的に明確な差が認められたとの報告があります。
これらは、TNF-α(骨吸収を促進する働きやインスリン抵抗性を引き起こす働きがある)は肥満者の脂肪細胞からも多量に分必されるため、歯周局所における歯槽骨吸収を促進し、歯周病を重症化させる可能性があるとされております。歯周病が虚血性疾患(冠動脈疾患)のリスクファクターであることが報告されており、肥満は虚血性疾患の最大のリスクファクターであるため、今後、肥満と歯周病の関係がさらに究明されれば、両者の虚血性疾患への相互的関連性解明が明らかになってくるでしょう。
山梨県富士河口湖町の総合歯科医院
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