2023.03.06
コラム「歯ぎしり」について Part 1
こんにちは。山梨県富士河口湖町の歯医者、井ビシ歯科医院です。
本日は「歯ぎしり」について、お話いたします。
1. 歯ぎしりとは?
歯ぎしりとは、日中や睡眠中に「きりきり」、「ぎしぎし」、「かちかち」といった音を発するもので、咬合神経症またはブラキシズムともいわれ、咬合(=かみ合わせ)の異常習癖といえます。ただし、食いしばり(噛みしめ)のように音がないものもあります。
症状としては、歯のこすり合わせによる騒音や、あごがだるい、歯が減る、歯ぐきが下がってくる、歯の根元がえぐれてくる、冷たいものがしみる(知覚過敏)、歯が折れたり割れたりするなどがあります。
歯ぎしりの最中は本人の自覚がなく、他人からの指摘で気が付くケースがほとんどです。無意識で起こしてしまうことが多く、完治が難しいと言えます。
昼間も歯ぎしりをしている?
夜中に、寝ている人の歯ぎしりの音で眠れない経験をした方がいると思いますが、食いしばりも歯ぎしりの一部と考えると、実は夜だけではなく昼間でもしているのです。
昼間の歯ぎしりの特徴は、「気が付くと上と下の歯がくっついていた」状態です。仕事に集中している時、緊張している時、悔しい時などに、無意識に歯と歯を食いしばっています。
夜の歯ぎしりは、睡眠障害の一種で、浅い眠りの時(レム期)に起こります。起きている時は歯ぎしりの音を出すことはありませんが、睡眠中は大脳皮質が抑制されて噛む力をコントロールできず、強い力であごの筋肉を動かし歯を擦ります。
歯ぎしりはなぜ本人にわからないの?
起きている時は、音は筋肉から脊髄を通り脳へと伝えられますが、睡眠中は、感覚器の伝達経路が遮断されるために、あごで起こっている歯ぎしりを感知できなくなります。他人からの指摘がなければ、自分の歯ぎしりに気づくことはほとんどないといってよいでしょう。
歯ぎしりは誰でもしている?
最近では、「歯ぎしりをしない人はいない」ということがいわれています。
歯ぎしりは、睡限中の「ギリギリ」等という不快な音を出すことで知られていますが、実際には音なしで歯ぎしりをしている人の方が多く、「歯ぎしりをしていない」と考えてしまうからです。
歯ぎしりは病気なの?
正常な人でも、睡眠中に約10~20分ぐらいは歯ぎしりをするので、病気かどうかの判断は難しいところです。
歯ぎしりは、健康な歯やアゴに負担をかけることになるので、歯科医院で相談することをお勧めします。
2. 歯ぎしりの種類
歯ぎしりのタイプには大きく分けて3つあると言われています。
① グラインディング
一般的に歯ぎしりと言われる症状で、「きりきり」「ぎしぎし」等の音がします。
最も多いタイプで、あご・歯を横にずらしながら歯をこすり合わせ、きしり音を発するタイプ。主に睡眠中におこる症状で、歯の磨耗を起こします。
② タッピング
上下の歯をカチカチと小刻みに鳴らします。
③ クレンチング
上下に力をかけて歯を押し付けるもので、噛み締めたままの状態が習慣化している状態です(噛み締め。食いしばり状態)。
発症例は多いのですが、音がなく、本人も周囲の人も気がつかないことが多いです。
こどもの歯ぎしり
こどもが睡眠中に歯ぎしりをすると、親御さんは大変心配になると思いますが、実はこどもの歯ぎしりというのは、一般的によく見られます。
こどもの歯ぎしりは、歯の生えかわりやあごの骨の発育に必要なものと考えられており自然な現象です。子どもの場合は、歯がすり減っても生えかわりますし、周囲の組織も柔軟ですので、歯ぎしりをしているからといって問題が出るということはほとんどないでしょう。
ただし、中には耳が痛くなったり、頭関節症の症状が現れることもありますので、そのような症状が見られる場合には対策が必要になります。
3. 歯ぎしりの原因
歯ぎしりをしてしまう原因は、主に3つあります。
① 習慣的な要因から歯ぎしりが出る
習慣的な要因による発生です。職業や職種によっては、ごく少数ではありますが歯ぎしりが多くなってしまうケースもあります。
例えば、プロ野球選手のように、瞬間的に歯を食いしばることが多い職業の場合には、それが原因で歯ぎしりと同じような症状が現れることがあります。
②噛み合わせが悪いために歯ぎしりが出る
被せ物のバランス・あごの異常・噛み合わせによるものです。
治療で高さの合っていない被せ物が入ったり、中途半端な歯列橋正などで噛み合わせのバランスが崩れてしまった場合などに、歯ぎしりの原因となることもあります。
③ストレスにより歯ぎしりが出る
精神的なストレスによるもので、3つの中で一番多いとされています。
憂鬱な気分になったり、不安な気持ちになった時、睡眠中に無意識に歯ぎしりをしたり、歯を食いしばったりしています。
なぜ、ストレスが溜まっているときに歯ぎしりをするのかというと、その歯ぎしりによってストレスを解消しているからだといわれています。
・歯ぎしりは、精神的ストレスにより脳や自律神経の異常興奮が原因で生じると考えられています。
・アルコールやカフェイン、タバコに含まれるニコチンなどもストレスの原因になることが多く、これらが歯ぎしりの原因となっていることも少なくないと言われています。
その他
・鼻、のどの炎症による場合
・枕の高さがあわずにあごが上がった状態の場合
・甲状腺機能六進などによる筋肉の緊張状態による場合
・遺伝的要因による場合、など
参考文献;
Bruxism physiology and pathology: an overview for clinicians.
Lavigne GJ, J Oral Rehabil. 2008 Jul;35(7):476-94.
Five-year retrospective evaluation of temporomandibular joint arthrocentesis.
Alpaslan C, Int J Oral Maxillofac Surg. 2003 Jun;32(3):263-7.
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