新着情報

2023.05.01

コラム

歯科とタバコの関係について

こんにちは。山梨県南都留郡富士河口湖町の歯医者、井ビシ歯科医院(いびし)です。

前回まで口腔がんについてお話ししておりましたが、そのリスクファクター(危険因子)として代表的なものは、喫煙・タバコであります。それ以外にも口臭や歯周病に関しても決して良いものではございません。今回は口腔(歯)とタバコの関係、歯周病についてお話ししていきます。

1. タバコ・喫煙による影響

① 喫煙による健康への影響

喫煙や受動喫煙により健康被害を受けてしまうことはよく知られています。

WHO(世界保健機関)は先進国の病気と死亡の最大の原因がタバコにある可能性が高いと親告しており、当然、口腔がんをはじめ、口の中の健康を書する要因の1つにもなっています。

② 歯周病の発症・増悪

・最大の危険要因

・歯周疾患の発見の遅れ

・進行促進(重症化)

・再発しやすい

③ 口臭

・口臭がきつくなる

④ 着色

・歯や歯肉がヤニで汚れる

⑤ ガンの発生率が高くなる

・口腔、咽頭がんの発生率が高くなる

⑥ 身体への影響

・全身の血管を収縮させる

・免疫細胞の働きを低下させる

・骨の生成バランスが崩れ、骨粗鬆症をおこしやすくする

上記のような悪影響があります。

「タバコはなぜ歯に悪い?」

・タバコに含まれているニコチンなどは、口の中はもちろん身体の全体の血管を収縮させます。

・喫煙により、白血球の機能が約 50%も減少し、歯周組織を細菌から守る力が弱くなり、細胞の回復力にも影響を与えます。

「口臭の原因」

たばこを吸った後の呼気に含まれるガス状物質は、非喫煙者にとっても不快なものです。アンモニアやスカトールなど悪臭成分が含まれていると言われております。

またタバコに含まれているタール・ニコチン・一酸化炭素といった成分は、唾液の分泌量を低下させたり、歯垢(プラーク)や歯石を付着しやすくし、歯ぐきの血行を悪くさせ、の結果として歯周病(歯槽膿漏)にかかりやすくなります。

間接的に、この歯周病が口臭の原因の1つとなるのです。

2. 喫煙と歯周病の関係

歯周病は虫歯と異なり、歯茎からその病状がスタートします。

それが「歯肉炎」の状態ですが、多くの場合は痛みもなく、進行がゆっくりとしているため、気づくのが遅くなり、症状が悪化しがちです。

歯周病の発症

歯周病の発症には、大さく分類すると「細菌因子」「環境因子」「生体因子」の3つの要因があります。

① 細菌因子

細菌のかたまりである歯垢(プラーク)

② 環境因子

喫煙、ストレス、飲酒、食生活、過労など

③ 生体因子

年齢、糖尿病、遺伝など

「喫煙による歯周病の発症」

・喫煙習慣は、歯周病を発症・増悪させる最大の危険要因のひとつです。

・喫煙者は、非喫煙者に比べて重度の歯周病にかかる確率が5~7倍も高いといわれています。

歯周病を引き起こす「三大有害物質」

喫煙により、一酸化炭素・窒素酸化物・ニコチン・タール・ヒ素など数多くの有害物質が影響していると言われています。その中でもニコチン、タール、一酸化炭素は三大有害物質と呼ばれています。

タバコに含まれているニコチンは、精神作用をもつ物質で、「毒物及び劇物取締法」明記されている毒物でもあります。

ニコチンの作用は、脳の中枢神経系や胃の収縮力を低下させ、吐き気などを起こしたりします。又、血圧上昇、未梢血管の収縮などがあります。

タバコの煙に含まれている一酸化炭素は、妊娠時の胎児への影響や虚血性心疾患・未梢動脈疾患・慢性呼吸器疾患などを誘発します。妊娠中に喫煙すると赤ちゃんも苦しくなるのです。また喫煙時に生ずるタールには、多くの発がん物質が含まれており、タールは呼吸器系疾患や癌と関係が深いと考えられています。1日 20 本喫煙している人は1年間でコップ1杯分のタールを飲んでいるのと同じと言われています。

ニコチン・一酸化炭素・タールなどが歯肉の毛細血管を収縮して、その影響で、歯肉の血液が環不良となり血液中の白血球が持つ免疫機能や治癒力を弱めることになります。

そもそも、歯周病とは・・・

「歯周病」とは、歯の周囲に付着したプラーク(歯垢)が歯と歯肉の隙間に入り込み、歯を支えている骨を溶かしてしまう病気です。プラークには非常に多くのバクテリアが含まれていて、そのバクテリアの出す毒素が歯肉に炎症を起こし、そして歯をささえている骨を溶かすのです。歯周病は歯を失うだけでなく、心臓病や糖尿病などの全身疾患にも悪影響を与えています。

歯岡病の種類「歯肉炎」と「歯周炎」

「歯肉炎」は、歯茎が腫れるなどの症状をいいますが、「歯周炎」

は、骨にも炎症を起こし、そのうちに歯の骨が痩せ、歯がぐらつき始めます。専門的な内容にはなりますが、以下のように分類されます。

【 歯肉炎 】

単純性歯肉炎

妊娠性歯肉炎

壊死性潰瘍性歯肉炎

成人性歯周炎

【 歯周炎 】

早期発症型歯周炎

思春期前歯歯周炎

若年性歯周炎

急速進行性歯周炎

歯周病を悪化させる要因

1. 喫煙

喫煙していると血流が悪くなり、歯周病が進みやすくなります。いったん炎症がおきてしまうと治りづらく、プラークもつきやすくなり、歯肉の色も黒ずんできます。

2. 糖尿病

身体の抵抗力が低下するため、歯周病を急速に悪化させるといわれています。

3. 女性の思春期、妊娠、更年期

女性ホルモンの影響で歯肉に炎症をおこしやすいといわれています。

4. ストレス

ストレスにより歯ぎしりなどしたり、身体の抵抗力が低下して炎症をおこしやすくなるといわれています。

5. 口呼吸

口で呼吸をしていると、口の中が乾燥しやすくなり、炎症を起こしやすくなるといわれています。特にコロナ禍の影響で、マスク生活が長くなり、口呼吸になってしまう方が増えたと言われております。

6. 食生活

やわらかくてあまいものばかり食べているとプラークができやすくなり、偏食をすると栄養摂取が不十分になり身体の抵抗力が低下します。

7. 悪い歯並び

歯ブラシが十分いきとどかなくなって、プラークがつきやすくなります。

3. データでみる歯と喫煙習慣

喫煙習慣とはの状況について、少し古いデータですが、厚生労働省の国民健康・栄養調査の結果が次のように報告されております。

40歳以上の男性においては、現在習慣的に喫煙している者は喫煙しない者に比べ以下の割合が低い。

①「何でもかんで食べることができる」と回答した者

② 歯の本数が20本以上の者

「何でもかんで食べることができる」と回答した者の割合は、年齢とともに低くなっており、現在習慣的に喫煙している者は喫煙しない者に比べ、40 歳以上のいずれの年齢階級においても低かった。

また、歯の本数が20本以上の者の割合も年齢とともに低くなっており、現在習慣的に喫煙している者は喫煙しない者に比べ、40 歳以上のいずれの年齢階級においても低かった。

注:女性においては、現在習慣的に喫煙している者の割合が少ない

ことから、喫煙習慣別の比較は困難である。

「何でもかんで食べることができる」と回答した者の割合(40歳以上)

【 喫煙者 】

40歳代 80.1%

50歳代 68.9%

60歳代 64.2%

70歳以上 47.9%

【 非喫煙者 】

40歳代 89.4%

50歳代 83.6%

60歳代 78.9%

70歳以上 60.6%

喫煙者と非喫煙者では、既に 40代からはっきりと差が出ています。「喫煙習慣別、歯の本数が20本以上の者の割合(40歳以上)」

【 喫煙者 】

40歳代 90.7%

50歳代 71.5%

60歳代 53.6%

70歳以上 22.2%

【 非喫煙者 】

40歳代 92.6%

50歳代 88.1%

60歳代 71.9%

70歳以上 32.3%

参考;
厚生労働省ホームページ

40歳代ではそれほど差がないですが、50歳になるとはっきりと差が出てきています。

そして、70歳以上になると、歯が20本以上ある人は非喫煙者では3割で、喫煙者は2割となっています。

参考文献;厚生労働省
著者写真

この記事を書いた人

井ビシ歯科医院

井出 太一

日本歯科大学生命歯学部を卒業、現在は井ビシ歯科医院に務める。

井出 太一先生について詳しくはこちら