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2023.04.10

コラム

口の中にもガンができること、ご存知ですか?

こんにちは。山梨県南都留郡富士河口湖町の歯医者、井ビシ歯科医院(いびし)です。

皆さんは、お口の中にも、がん(癌)ができることをご存知でしょうか。

口腔にも発生する、口腔がんはここ20年で増えており、今後もさらに増加していく見込みです。

背景として、日本人の平均寿命が延び若い頃から、がんのリスク因子を蓄積している方が多いということです。

有害物質を含むタバコを長期的に吸っていくことで、遺伝子を破壊し、飲酒によって、強いアルコール成分が、口の中の粘膜に悪影響を及ぼし、さらに虫歯や歯周病、不適合な義歯による慢性的な機械的刺激が、がんを助長させていきます。口腔がんの好発部位は舌や上あご、下あごの歯肉(歯ぐき)にできることが多いです。

今回より、広義のがんについてから、口腔がんについて、また当院でのスクリーニング検査などについてお話ししていきます。

次回のコラム:「口腔がん」についてはこちら

1. がんとは?

厳密にいうと、ひらがなのがんと漢字の癌は分類によって、使い方が違います。ひらがなで「がん」は、すべての悪性新生物の総称です。漢字の「癌」は下記のように分類されます。

1 癌

上皮(皮膚、粘膜など)や胃の粘膜から発生する

2. 肉腫

間質(骨、筋肉、血管など)から発生する

3. その他

造血器から発生(自血病、悪性リンパ腫、骨髄腫など)

中皮から発生(悪性中皮腫など)

そもそも、広い意味でのがんの定義は専門的な用語となりますが、以下の3つが条件となります。

・無秩序な自律的増殖

・浸潤と転移

・悪液質

それでは、日本人の罹患数が多いがんについて、まとまっているものを紹介します。

日本の最新がん統計まとめ

(2017年の罹患数が多い部位は順に)

1位 大腸がん

2位 胃がん

3位 肺がん

4位 乳房がん

5位 前立腺がん

全部位のがん罹患者数97万人(2017年)約100万人との結果です。

残念ながら、死亡者数としては以下のデータも公開されております、

わが国の全部位のがん死亡数37万人(2018年)

1位 肺がん

2位 大腸がん

3位 胃がん

4位 すい臓がん

5位 肝臓がん

参照;
国立がん研究センター
がん情報サービス https://ganjoho.jp/public/index.html 

2. 口腔がんとは

口腔がんの統計について簡単に紹介します。

口腔がんはもともと、頭頸部癌や咽頭、喉頭がんなどと総じて統計されていたことから、正確な疫学調査の結果というわけではありません。

・発症数:6,900人(2005年)-全がんの1~2%を占める

– 1975年は2,100名だったが、2015年は7,800人と予想されている

– 全頭頸部がんの40%を占める

・男女比:3:2で男性に多い

  • 好発年齢:60歳代より増加(人口比)
  • 好発部位:舌 上下歯肉

参照;
島根大学口腔外科疫学データ
日本口腔腫瘍学会、日本口腔外科学会編:科学的根拠に基づく口腔癌診療ガイドライン2013年度版より

2019年には約8000人以上と増加傾向にあり、今後も増えていくことが予想されます。

報道でも、タレントの堀ちえみさんが罹患されて、ニュースで知った方も多いかと思います。

引用ニュース;
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1251.html 

もう少し、細かい部位での統計としては、日本での口腔がんの好発部位は以下のような結果です。

60% 舌

9% 頬粘膜部(ほほの粘膜)

6%  上歯槽と歯肉(上歯肉)

12% 下歯槽と歯肉(下歯肉)

9%  口腔底

3%  口蓋・硬口蓋(上あご)

他の国における口腔がんの罹患数は?

・国際的には、喫煙と飲酒の両方を嗜好する国において口腔罹患率が高いです。

・南アジア諸国に多い。理由としては、檳榔樹などの噛みタバコによる習慣が原因と考えてられており、インドにおける口腔癌の患者は全人口の0.5~5%、250万人に達すると推定されている。

・わが国における口腔・咽頭癌による死亡率はフランスやイタリアより低いが

が,食事や飲酒習慣の影響が大きいと考えられている。

口腔がんの病理(唾液腺がん以外)

扁平上皮癌と言われるものが90%以上であり、そのほかの腺癌、肉腫、悪性リンパ腫は稀であります。

3. 口腔がんの危険因子 リスクファクター

喫煙 たばこ

タバコは明らかなリスクファクターの代表です。約4,000種類の化学物質の中に発癌因子、発癌物質の活性化や解毒にかかわる酵素に遺伝的多型(SNP)を認めることから、喫煙に対する発癌リスクは個人差があると言われてます。

飲酒

アルコールに直接的発癌性はないが、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドに発癌性があると報告されております。口腔内でもアルコールが分解され、生じたアセトアルデヒドが蓄積することにより発癌するとの報告もあり、個人差はあるものの、比較的アルコール度数が高いものほど、危険因子になりうると言われております。

ウイルス感染

特にヒトパピローマウイルス(HPV)が口腔癌の発癌にも関与すると報告され、口癌では正常口腔粘膜より4.7倍高率に検出されたと報告されている。オーラル

ックスがリスクと言われております。

4. 口の中のできもの、色の変化について

口腔がんについては、専門の歯科医師でないと、目で見て判別することが困難であることがあり、最悪の場合見逃されてしまうこともあります。

自己判断は危険ですので、ぜひ口腔外科を標榜する歯科医院での診療、相談を強くおすすめします。しかし、まず大事なことは、患者さん皆様ご自身で、口腔にがんができることを知っていること、また何か異常を感じたら、歯科医院や歯科口腔外科へ行くことなのです。

注意が必要なのは、赤と白(または赤白が混在している)の病気です。中には口腔がんとまぎらわしい口腔疾患もあります。義歯性潰瘍(入れ歯による潰瘍)や口内炎です。

硬さがあったり、長期間消失しないものは要注意ですので、2週間経っても治らなかったら歯科医院や歯科口腔外科へ相談してください。

その他にも線維腫(エプーリス) 良性腫瘍、舌線維腫(いわゆるいぼ)、舌乳頭腫(表面がぶつぶつしている)舌脂肪腫(内部から盛り上がっている)、色素沈着 (メラニン色素)などという良性腫瘍もあります。

悪性黒色腫という腫瘍もありますので、急激に大きくなるほくろは危険です。

本日はかなり専門的な用語もあり、難しい話もありましたが、「治らない口内炎」は歯科医院や歯科口腔外科での受診が必要であることをわかっていただければと思います。

次回も口腔がんについて詳しくお話しします。